空軍北領空*

ここは魔界の空軍の北領空。ここにはある1人の男がいた。
雨のような透明な薄い水色の長い髪をなびかせながら空を見上げる男。そう、この男が空軍の東西南北領空のリーダー「エギュン」である。
頰には雫のペイントがしてあり、外見はどこから見ても女性に見える。だが、彼は男である。女装が趣味であるのだ。

そう、これはその男、エギュンの物語である。







***








とある雨の降る日、エギュンは空軍の元帥であるフアフューノール=ウェイの元へやってきた。
今日は会議の日でもなく、個人的にフアフューに会いに来たのだ。

「……珍しいな、お前から俺に会いに来るなんて」

フアフューは夕日のように真っ赤な瞳でエギュンを写す。エギュンはいつもよりも控えめな笑みを浮かべていた。

「会いたくなったんだよー。たまには甘えさせてくれよ」

突如にフアフューに抱きつくエギュン。フアフューは驚きもせずに、エギュンの頭をいつものように撫でる。

「今日はあいつの命日だからなァ…。少し経ったらあそこに向かうぞ」

エギュンは無言で頷いた。


***



「お前はよく行くんだろ…?」

フアフューは海辺の近くに枯れた花束の前にやってくる。その花束を炎で燃やし新しい花束をその場所に置く。そして持ってきたお酒を花束の隣りに蓋を開けて置く。

「あぁ…俺様にはアイツしか居なかったからな…」

エギュンもフアフューの隣りにやってきて手を合わせて目を瞑る。

「アイツは今のお前みたいに不真面目で、巫山戯た奴だったな…」

フアフューが指を鳴らすとまだ降り続けてた雨が止んだ。雲はまだ少し灰色で、晴れやかな天気とはいえないがエギュンは少し嬉しそうに海に映る空を見上げた。

「それでも、アイツは妻としての役割はキッチリとこなしてたんだよ?…まぁ、たまには巫山戯てた時もあったな」

過去を思い出すたびエギュンの脳裏には優しくエギュンを見守る妻、「シリーナ」の姿が焼きつく。
だが、それは最初だけで後半からは悲しい気持ち、絶望感がドッとやってくる。

「…まだアレあるんだろ?お前の結晶」

「あるよ…。案内するよ」

すると、エギュンは海にだんだんと入っていく。フアフューもその後をついていった。



***


潜り続けること3分くらい、少し大きめな家が海の底に建っている。屋根は青色で普通の人間界にありそうな家。だけど、違うところは壊れかけていること。初心者が直した勘が半端ない。崩れないように基本岩で支えられている。

「…なんか、またボロボロになったなァ。そろそろ新しく建て直した方がいいぞ」

エギュンは積み上げてある岩を撫でる。すると綺麗な透明の結晶になる。結晶は美しく輝いている。しかし、ボロボロな家とは合ってないが、何故かマッチしていた。

「これが一番しっくりしてるでしょ?人魚姫のお城」

家のドアを開けると外見とは違って中は綺麗に片付いている。家具は海らしい可愛い物ばかりで水色で揃えられている。逆に何年も使われていないのがよくわかる。
リビングらしき大きな部屋にたどり着くと、ちょうど真ん中あたりぐらいに大きな水晶が置いてある。水晶の中には上半身は美しい人で、下半身は魚の特徴を併せ持つ、人魚がいる。
エギュンはその近くの貝殻のソファーに座る。

「久しぶりだなァ…シリーナ。今も変わらず美しい」

水晶を優しく撫でる。すると、フアフューはエギュンの隣に行きソファーに座る。
エギュンはそのままフアフューに身体を任せる。

「あれからずっと微笑んだままなんだよ」

水晶の中の人魚は、微笑んだままであった。死んではいない。息はしてるが植物人間の状態である。しかし、2度と生き返ることはない。命を繋いでいるのは胸に刺さった紫色の刃をした刀と水晶自体である。
刀で出血を止めていて、水晶には回復魔術が流れていて、それが息を繋いでいる。

エギュンはずっとシリーナから目を離さず静かにフアフューの肩に寄り添っている。

「優しい笑顔だ…。お前に向けて最後に微笑んだよな」

すると、バッと立ち上がってフアフューの胸ぐらを掴みフアフューを持ち上げる。

「最後なんて言うんじゃねェーよ!!まだ生きてるんだ!」

いつもの冷静で落ち着いてるエギュンとは違って取り乱し冷静さを忘れている。
それに変わってフアフューはいつも通り無表情である。

「じゃあ、なんであそこに墓を作ったんだ?」

その言葉を聞いたエギュンは悲しみな色を瞳に浮かべ、フアフューを離した。
フアフューは乱れた服を直してエギュンに向かい合うと、そのまま抱きしめた。

「冷静さを失ったらまた、あの日のことを繰り返すぞ」

「っ!」

エギュンは静かに目を閉じた。



To be continued

魔界のある出来事2

【アミーVSエネロ2】

「ここは…?」

目がさめると目の前は真っ暗で何も見えなかった。本当に目を覚ましたのかもわからない。

「確かエネロさんと戦っててー…」

身体を動かそうとしたが、金属の音が鳴り響き身動きが出来ない。
その瞬間辺りが光に包まれる。

「う、嘘でしょ…」

エネロは特別な鎖に繋がられる十字架に貼り付けられている。…そう、あの時のように。
すると、突如綺麗な顔立ちの男性がアミーの前に現れる。

「ラー…」

ラーと呼ばれた男性はアミーのことを光のない目で見つめる。アミーは炎で鎖を溶かそうとするが、特別な鎖はアミーの炎さえも弾きかえしてしまう。

「無駄な抵抗を止めて少しくらい大人しくしたらどうだ、元太陽神アポロン

ラーはアミーの顎を掴み自分の方に向ける。アミーはそのまま睨む。

「汚ねぇーやり方なんかするんじゃねェーよ、ラー」

アミーは今まで誰にも見せたことないような目つきでラーを睨みつける。

「汚いやり方は貴方ではないのですか?………あと、気安く俺様の名を呼ぶな」

アミーの腹に膝を入れる。アミーは顔を歪ませる。

「それが手前の本性なんだよォ…!俺の前だけじゃなく、皆の前でも見せたらいいんじゃねェーのかよ」

口調が元に戻ってしまうアミー。そんなアミーを見下しながらラーはもう一発蹴りを入れる。

「黙れ、元太陽神。今のお前なんかに仲間なんていない」

ラーの後ろでは沢山の神が並んでそれを見ている。

「まぁ、最初からお前のことを仲間だと思ってた奴は誰もこの世にはいねェーんだよ、アポロン

ラーはアミーを中心に魔法陣を発動させる。

「生まれ変わったら愚民にでもなってろ、元太陽神アポロン

その直後に魔法陣から勢いよく炎が燃えだす。

「(またこの夢か…。何度見ても何故俺は抵抗するんだ……きっと俺は)」








アミーはハッと意識を取り戻す。
目の前にはラーではなく、先ほど戦っていたエネロが紅茶を飲んでいる。

「夢はどうでしたか?」

エネロはうっとりしながら微笑む。アミーは顔を暗くしたままで膝をついてしまう。

「元太陽神なだけありますわね…この悪夢は最悪ですね。まさか…弟子に太陽神の座を取られるなんて」

アミーは何も言い返せなくその場で歯を食いしばるだけ。

「あの状況からよく生き延びましたわね。…ふふっ、それに精神的にも」

エネロは飲んでいた紅茶のカップを持ちアミーの方まで歩いていく。
すると、エネロは残りの紅茶をアミーにゆっくりとかける。

その光景を見ていた東西南北のリーダー達も驚いた。フアフューは真剣な眼差しで2人を見つめるが、落ち着きがない。

「だから貴方は人を信じなくなったんですよね?…上面の関係で虚しくないんですか?」

エネロは回し蹴りでアミーを蹴った。アミーは避けずそのまま吹き飛ばされる。

「………」

「動きたい?言葉を吐きたい?否定をしたい?…ふふっ、それは今の貴方では出来ないでしょうね」

またもアミーに近づきアミーの頭を足で踏みつける。

「なんで身体が動かないか教えてあげる。…貴方がこの問題を解決しなければ一生動かないわ」

そのままぐりぐりと踏み潰すエネロ。
一方、アミーは何もする事が出来ない。動くのは脳だけ。

「(神の力も封じる技か…。禁断の技を使ってそう長く持たないな…集中力が切れた瞬間に畳み掛けるかー)」

するとエネロはアミーの顎を持ち上げる。アミーはエネロの目を見ると背中がぞっとした。

「私から目を離してもいいのかしら?」


顎を持つ手をやめ、赤い矢を召喚する。そして逆の手には青い矢を召喚すると、赤と青の矢を合わせる。

「赤は恐怖の矢。青は精神破壊の矢。…2つ合わさると何になるか分かるかしら?」

アミーはカッと目を開けて抵抗しようとするが、身体が動かないため唇を噛みしめる。

「…ふふっ、正解は死(破壊)よ」

振りかざした瞬間、先ほどアミーが持っていた槍がエネロの腕に刺さる。
一瞬の出来事に力をコントロール出来なくなり、アミーへの力を解放してしまう。

「…っ!」

アミーはエネロを軽く蹴り距離を置く。エネロはそのまま吹き飛ばされ地面に倒れる。

「ぐっ…一体誰が…こんなことするのよ……ちっ」

槍が飛んできた方を見ると、いつの間にか現れたレラジェがエネロを睨みつけている。

「……手前、アミーに何してんだよォ」

レラジェはどんどんエネロの方に近づいていく。エネロはすぐさま立ち上がり弓矢を持たず打つ構えをする。

「いきなり邪魔をするなんて…常識ないんじゃないかしら」

そのまま左手の手を離すと弓が発射された音が鳴り響く。その瞬間、レラジェの動きが止まる。しかし、まだレラジェは今でも喰ってかかってきそうな勢いで睨んでる。

「透明の矢は身体を麻痺させ動けなくなるのよ…さて、何で貴方がここにいるのかしら?」

エネロは少し警戒しながらレラジェに問いかける。

「アミーを傷つけるのは許さない!!」

「あら、私たちは模擬戦中なんですよ?怪我するのは当たり前なのでは?」

アミーはこちらに駆け寄ってくる。レラジェはそのままアミーに目線を移す。

「レラジェ!何してるのー…何でこんなことするのよー」

先ほどまで見ていた東西南北のリーダー達や、フアフューもレラジェの方に集まってくる。

「……アミーがそんな顔するなんて手前、何したんだよォ!?」

エネロは冷たい態度でレラジェを見つめてる。周りの人も黙って見つめるしかない。アミーは少し動揺してるように見えるが、必死に隠そうと下を向いてる。

「あら、ここで言ってもいいのかしら?」

見下すように言い放つとアミーの目の色が少し変わる。レラジェも少し大人しくなる。リーダー達は興味があるが、ここで聞くことは間違ってると思って珍しく黙って3人を見つめる。

「アミー」

フアフューはアミーに歩み寄る。アミーは光のない目でフアフューを見る。

「エネロが何をやったかは大体は理解できる。だけどな、お前はそれを乗り越えるために空軍に入ったんだろォ?」

アミーの頭を撫でる。アミーは少し驚くが、また下を向いてしまう。

「下だけは向くな。前を見ろ。後ろを振り向きたくないのは皆そうだ…だけどな、後ろも振り返らないといけない日が絶対やってくる」

バッと顔を上げるアミー。するとフアフューはいつも真顔だが、少し柔らかい笑顔を見せる。周りにいたリーダー達は少しびっくりする。レラジェは目を開いて2人を見つめる。
エネロは無言で弓をしまう。

「模擬戦はここで終わらせていただきたいのですが、よろしいですか?」

いつも通りの笑顔を向けながら一礼をする。

「アミー様すみませんですわ。嫌な事を思い出させてしまって」

アミーはエネロの方を向くとエネロはにっこりと笑っている。アミーもいつも通りに微笑む。

「ぅんー。またやってよー、エネロさんー^^」

その瞬間エネロの姿は消え、そのいた場所にはニゲラが一輪だけ咲いていた。

「ニゲラかー…花言葉は……」

アミーはそう言うとニィっと笑った。
レラジェの身体は自由に動くようになった。

「アミー大丈夫かァ?」

アミーの肩に手を置くレラジェ。アミーはその手を優しく振り払うと満面な笑みでレラジェに抱きついた。

「大丈夫だよー!私ー、空軍で良かったー!!」

きゃっきゃやってるアミーとレラジェを見ながらフアフューはまたも少し微笑む。

「フアフューも変わったねー。やっぱりルシファーさんはすごいね」

「前だったら絶対笑わないし、助けたりしなかっただろうね」

「まぁ、成長ってやつじゃねェーの」

「……俺たちももっと頑張らないとな」

マンモンの言葉に4人は少し黙り込む。

「…さて、帰ったらたっぷりと会議しないとなァ…ハハッ」

フアフューは4人の襟首をまとめて掴む。ギョッとリーダー達は驚く。

「まだまだたくさん時間あるから楽しみにしとけよ…お前ら」

そのまま瞬間移動でフアフュー達はアミーとレラジェの前から姿を消す。

アミーはニゲラの花を摘み、不敵に笑う。




「今度は夢でやろうぜェ…エネロ♪」




〜END



魔界のある出来事

【アミーVSエネロ】

ここは魔界にある空軍の中の西領空の領域である。
そこに白髪で毛先がカラフルの女性、アミーが仁王立ちしている。周りにはその西領空のリーダーである、バイモンや北、東、南の領域のリーダー達もいる。

「アミーとエネロの対決なんて…勝つの決まってるじゃねェーの?」

バイモンは隣にいた北のリーダーのエギュンに話しをかける。

「元神のアミーの方が力は上だろうなァ…。まぁ、なんとかなるんじゃねェーの?」

「エネロ様も結構強いですよ…。スイッチが入ると……」

エギュンの隣りでガタガタ 震えてる女顔の東のリーダー、ウリクスがそう言う。

すると赤と黒の薔薇が風と一緒にやってくる。その中から黒いドレスを着た美しい女性が現れる。

「ふふっ、すみません。少し仕事が長引いてしまって…」

にっこりと笑うと、ドレスの裾を持ち上げて一礼する。

「おぉー、エネロさんから戦闘に誘われるなんて思ってなかったからワクワクしながら待ってたよー^^なんかリーダー達が見たいって言うから呼んだけど大丈夫だったー?」

アミーはいつも通りヘラヘラ笑いながらエネロに話しをかける。
エネロもいつも通りの笑顔で丁寧に返す。

「はぃ、大丈夫ですよ^^お手柔らかにお願いいたします」

すると、エネロはふわっと一回転をすると弓が現れる。それを合図に両者とも間合いをあける。

「えっ?今のが始める合図なの?w」

「……わかりにくい」

見学者の4人がわいわい話してるうちに…その時。

「お前ら会議をサボって何をしてる?」

突然4人の後ろに風のように現れた黒髪のオールバックの男が真っ黒の笑みを浮かべて立っている。

「すっかり忘れてたよー」

エギュンはそう言うと舌を少しだしぶりっ子みたいな仕草をしながらそう言った。
オールバックの男はエギュンを無視して、南のリーダー、マンモンに話しをかけた。

「…あの2人は何をしてるんだ?」

「……模擬戦闘だ」

冷たい口調でそう言い放ったあと、マンモンは氷で椅子を作り始めた。

「興味あるだろ…?少し見てから会議にしよ……」

「……まぁ、ないと言ったら嘘になるな。少し見学するか」

さっきマンモンが作った氷の椅子に座るオールバックの男。
同じくマンモンが作った氷の椅子にリーダー達も座る。

「もう少し可愛くできないのー?」

「文句あるなら座るな…」



その頃、アミーとエネロは激戦とはいかないが、そこそこの戦闘を繰り広げていた。

「……(何故攻撃をしてこないんだー)」

アミーは炎に包まれた槍で攻撃を繰り返してるが、エネロはひらひらと避けるだけ。
アミーは不思議に思い、少し間合いをあけるため後ろに飛んだ。

「あら、どうかなさいましたか?」

エネロはいつも通りニコッと微笑みながらアミーに問いかける。
武器も構える様子はない。

「いやー、何でもないけどー…武器構えないのー?」

「一応これでも考えて行動してるのですわ」

するとそれを聞いたアミーはもう一本槍を増やす。エネロはそれを見ると少し顔色が変わる。
周りにいるリーダー達もそうだ。誰も見たこともなかったアミーの槍の二刀流だったからだ。

「…あんまり舐めてるとー、エネロさんの可愛い顔焦がしちゃうよー?」

左手に持っていた槍をエネロに向かって勢いよく投げつける。
エネロはふわりと交わした瞬間、アミーは後ろに回り込み、右手で持っていた槍をエネロの身体に突き刺す。

「ッ!?」

一瞬の出来事に驚いたが、危機一髪交わしたが、右肩をかすめる。慌てて間合いをあける。
少しずつアミーの炎が右肩を侵食していく。

「まぁ…びっくりしましたわ。まさかこんなことをしてくるなんて、考えていませんでした」

エネロは右手に弓を持ち替え、左手に弓矢を召喚する。矢は少しピンク掛かっていて、矢の先はハート型をしている。
その矢を燃え盛ってる右肩の中心にぶっ刺すと、青い光に包まれ炎共々に癒える。

「おぉー、流石エネロさんだねー。私の炎までも癒すなんてー」

槍をクルクルと身体の周りで回しながらそう言い終わると、槍先をエネロに向ける。

「今度は癒せられないような火傷を負わしてやるよー」

するとエネロは少しだけ目を開き、クスッと笑った。どこか余裕のような態度で弓を天に向けいつの間にか召喚した黒掛かった矢を放つ。

「Nightmare…をごゆっくり」

エネロがそう言い放った途端、天に向かって打った矢は黒い光とともに消滅をした。



「…何が起こったんだ?」

周りで見てたリーダー達は首を傾げてる。オールバックの男は一言も喋らず黙って見ている。

「フアフューはなんか分かってるのかァ…?」

バイモンは黒髪のオールバックの男、フアフューに話しをかける。


「あいつのやり方はいつもと変わらねェーな…」

「えっ?」

フアフューは満足そうに笑うと、エネロの元へ向かう。

「フアフュー!?今は模擬戦中だよ!!」

エギュンが止めに入ろうとしたが、マンモンの腕で止められる。
マンモンはエギュンの瞳をじっと見つめると、エギュンは納得したのか、黙って席に着く。

「エネロ。神様を騙すなんて最低な奴だなァ」

「あら、フアフュー観ていたの?それならもっと早く話しかけてほしいですわ^^」

いつも通り微笑みながらフアフューの元へやってくるエネロ。
アミーは何故かその場から一歩も動かない。

「内面から焼いていかないと、美味しく焼けないわ。私はレアは好きではありませんから」

エネロはアミーに近づき槍を奪い取り、エギュン達のいる方に投げつける。

「バイモン様。少しの間お預かり願いますわ^^」

「……りょーかい」

バイモンはしぶしぶ槍を片手で受け止め、すぐ近くの地面に刺す。

「さて、目が醒めるまで甘い物でも頂こうかしら。今日のおやつを食べ損ねていたので丁度いいですわ」

「一応、元神なんだからそう保たないと思っとけよ…」

そう言うとフアフューはまたエギュン達の元へ戻っていく。

「えぇ、そんなのはわかってますわ。……ふふっ、アミー様はどんな夢を見てくださるか楽しみですわ!」

さっきとは全く別人のように笑う、エネロ。どこか残酷で、初めて悪魔のような笑みを浮かべたのであった。

To be continued

crazy Love 3

愛三回目「愛の標的」






「燃亜…ッ!それに…、燃亜の友人の…。」

魔法玉には赤い髪を高く一つに纏めている少女、燃亜。
もう1人は蒼い髪のショートヘアーに頬には黒い星のペイントが入っている少女。

向こうにもこっちの様子が見えているのか、燃亜達は魔法玉に話しをかけている。

「ラナ…!そっちは大丈夫かッ!?」

「なんで帝までいるの…?ちょっと説明してよ!」

すると、ラナは水仙と帝を睨みつける。
水仙はにこにこと会った時と変わらない笑顔を浮かべている。

「燃亜達に何を吹き込んだんですッ!何を、企んでいやがるんですか…!!」

その言葉を聞き、さっきとは違う笑みを浮かべる水仙。

狂ったように顔を歪ませ、何か訴えるように笑う。

「あははははははッ!ははは、だーかーらー、僕はただ君の愛を治そうとしてねェ。僕は独占欲が強くてねェ、君の愛を僕のものにしたいんっすよォ。」

すると、帝がラナの前に立つようにして武器を構える。
スペツナズナイフだ。

「………おい、星姉さんがいる限り、僕は水仙の仲間なんかにならないよ。」

「さて、それはどうっすかねェ。」

帝は水仙を睨みつけながら指を鳴らせば唐突に燃亜と蒼い髪の少女、星が現れる。

突然のことで少し驚愕の表情の2人だったが、周りの状況を見て全ての状況を把握する。

「ラナッ!大丈夫だったか?」

燃亜はラナに近寄り何もされてないことを確認する。
星は帝と何かを話しているようだ。

「水仙…お前は何がしたいんだ?」

燃亜はゆっくりと水仙の方に身体を向ける。

「そいつを知ってやがるんですか?」

「あぁ、星の弟の帝と仲が良くていつも変な愛ばかりを教えてくる…。」

「変な愛って失礼じゃないっすか、燃亜ちゃん。」

水仙は身体の火傷の部分に優しく触れうっとりしたように笑う。
その笑顔は、ラナが見た水仙の笑顔の中で1番脳に恐怖を与えた。
同じく燃亜もそうである。
少し戸惑いを見せている。

「ねぇ、みかっちゃん。みかっちゃんは僕の味方だよねェ?」

ラナ達から目線を外し、星といる帝に目線を送る。

「しまった……!」

帝は水仙と目線を合わせた瞬間、立ちくらみをしてしまう。

「ねぇ、みかっちゃんは僕の味方だよねェ?だってみかっちゃんは僕の愛を信じてくれるっすよねェ。みかっちゃんは騙されてるんっすよォ。」

「くっ…僕は………」

唐突、言葉を発しなくなる帝。
心配をしてる星は帝の肩に手を置こうとする。

しかし、その星の手は帝自身の手で払われる。


「み…帝…?どうかしたの?」

「みかっちゃん。そんな蒼乱星の話しなんて聞かなくていいっすよォ…。みかっちゃんと何も関係がない人なんっすからァ。」

いつもの帝じゃないことに気がつき星は少し距離を取った。
いつもと違う帝のオーラ。

「みかっちゃん。そいつ等の相手をしてくれないっすかァ?僕はラナちゃんですからァ。」

「…いいよ。僕が2人を相手にしてあげるよ。」

帝は星と燃亜の前に立ち、指を鳴らすと水仙とラナとは違った真っ白な空間に引きずりこまれる。

「な…何だこれ…?こんなの初めて見たよ。」

「水仙は帝に何をしたんだ…。」

帝はニィっといつも星に見せない笑顔を見せれば愛用の武器、スペツナズナイフを二本持って構える。

一つはいつものナイフ。もう一つは刃が紫色の毒々しいナイフ。

「見ての通りこっちのナイフは毒が塗ってある。猛毒がね。」

「出来るだけお前と闘うのは避けたいんだが…。」

燃亜がそう言うと星も頷く。
しかし、帝はすごく嫌そうな顔をすると普通のナイフの刃の部分だけを燃亜に向かって飛ばす。
それをかろうじて避ける燃亜。

「何言ってんの。何、僕をまた騙したいの?そんなの許さないから。」

「騙すって…俺がいつお前を騙した?」

風を使い、ナイフの刃を回収する。帝の能力は気体、液体を自由に操れる科学的能力だ。
少しやり方を変えれば恐ろしい結末が考えられる。
酸素を無くすことや、酸素を純酸素にして殺したりすることだってできる。

しかも、帝は完全に能力を使いこなしている。
いつ息の根を止められてもおかしくないこの状況。
星は不適に笑った。

「帝のこと信じてるよ。私はお前の姉なんだから。」

ニコっていつも通りの笑顔を浮かべる星。
しかし、帝の顔からいつもの微笑みが浮かばない。

「はぃ?僕に姉さんなんか居ませんよ。僕はずっと孤独だったんですから…。」

「……記憶を消されたってことなのかな。」

星はそう呟くと燃亜の身体に触れる。
燃亜は少し驚いたが、ニィっと顔を歪ませる。

「成る程なァ…。さすが星、帝のことを分かっていやがるぜ。」

星は腕から剣を半身出して構える。目は夕日のように赤く染まり、首元から龍の痣が見える。
燃亜も機関銃を召喚して構える。


「「目を覚まさせてやるッ!!」」





to by continued…

crazy Love 2

愛二回目「愛の形」




「全ての“愛”を一緒と考える。狂愛も純愛も変わらない愛の形ってェ…。」

見えない水仙の表情と言葉に圧倒されてしまうラナ。
しかし、ラナも黙ってはいられなかった。

「狂愛と純愛が一緒って…それは間違ってねーですか?」

「間違ってなどいないっすよ。狂愛も純愛も一緒。殺すにしても愛してればなんも問題ない愛の形っすよォ。」

ラナの質問に理不尽のことを言う水仙
水仙の目には光が入っていなかった。どこか悲しい色が混じっている。



「それとね、君のこと気に入っちゃったんっすよー。だから、僕と愛を語りあわない?」

水仙が指を鳴らすと、さっきまで河川敷だったこの場所が真っ暗闇な空間へと変わる。

水仙とラナだけが光って見える。

「なっ!?貴様何をしたんだーです!」

「僕の好みの愛を語る場所に変えただけっすよ。ラナちゃんは気に入らなかったっすか?」

水仙は魔女の帽子を取り、ポンチョを脱ぎ捨てる。


ポンチョで見えていなかった場所には大きな痛々しい火傷の痕があった。
少し血が滲んでるようにも見えた。

ラナはそんな水仙を見て言葉を失って黙りこんでしまう。
すると一点だけ違う傷痕があることに気づく。

肩の斬り傷だ。
酷い火傷とは違っていたって普通の斬り傷。しかし、何度も斬られた痕が残っている。

「僕の姿が惨めに見えるっすか?やだなァ…、この傷はあの人が僕にくれた“愛”なんっすよォ。」

左腕の火傷を右手で力いっぱい叩く。
その部分から血が滲み出す。

「ッ!?や…やめろーです!そんなことしても…ッ!」

ラナは止めにかかろうとしたが身体が動かなかった。
あまりいきなりのことでラナは動揺するばかり。

「いきなり殺そうとするなんて…水仙らしくないな。」

ラナの後ろから金色に近い緑色の髪をした少年が歩いてくる。

「みかっちゃん…僕の邪魔しないで下さいっすよォ。」

みかっちゃんと呼ばれた緑の髪の少年。指を鳴らすとラナの身体は自由に動くようになる。

「いや、ごめんね。あいつがいきなり殺そうとするから、それは間違ってるかなって思って君の動きを止めさせてもらったよ。あっ、僕は雨龍帝。堕天使だよ。」

帝は不適に笑ってラナを見る。

「貴様…あのサリエル様の…ッ!?」

帝がまた指を鳴らすとラナの声が出なくなる。
どうやっても次の言葉は出なかった。

「…あまりその事に触れないでほしいんだ。僕とはもう関係ないからさ。」

指をもう一度鳴らすと声が普段通り出る。


帝はラナの声を出すために使われる器官の空気を止め、声を発生させなかった。次に言われる言葉に恐れたからだ。

「でもーこれで2対1っすか…。それじゃラナちゃんが可哀想っすね。なので特別に助っ人を頼んでおきましたよー。」

水仙は魔法(水晶)玉をラナの方に投げる。
そこに写っていたのは…。






to by continued…

Crazy Love 1

愛一回目 「出会い」




この話しは自分たちがあの「ザ・ウォッチャーズ」の奴らを捕獲する少し前の話しです。




「………そんな簡単に見つかるわけねーですね。」

白髪に男用の騎士のような服を纏った少女、ラナ=モンドシャインは河川敷のベンチに座っている。
その隣にはふわふわの白い毛の猫が日向ごっこしていた。
ラナは起こさないように優しく猫の頭を撫でていると、後ろから何かの気配を感じ取った。

「この闇に近い系統は…堕天使!?」

すぐさま立ち上がって後ろを見渡すが、どこにも人影は見えない。
立った勢いに驚いた白い猫がベンチから走り去っていく。
すると、猫の去って行った方に魔女の服を着た女の子が立っていた。

「わぁー、可愛っす!毛がふさふさしてて気持ちいいー!」

さっき、ラナの隣りで寝てた白い猫を抱きかかえ微笑む魔女の女。
彼女の背中には真っ白な羽ではなく漆黒に染まった羽が生えていた。

「やぁ、君天使っすか?」

羽をしまい、猫を抱えながらラナの近くまでいく。

「あっ、別に何もしないよー!ちょっと聞きたいことがあるんすっよ!」

「聞きてーこと…?」

すると猫を解放してさっきまでラナが座っていたベンチに座る。
ラナも大人しく座った。

「それで聞きてーことはなんですか?」

「まずは自己紹介からっすよ!僕は水仙、君の思ってる通り堕天使で合ってるよー!」

ーこいつ、自分の心を読んでいやがる…です。

水仙がけっこう顔に出てたんだよーって言うと、ラナは自分の顔を触りだす。

何もわからなかった。

「あははっ、君面白いね!名前は何て言うの?」

「自分の名はラナ=モンドシャイン。アンタの言うとおり天使です。で、用件は何ですか。」

ラナは少し警戒しながら水仙に聞くが、水仙は全然警戒すらしていなかった。

出会ってから絶やさない笑顔。
それが余計に恐怖を与え、ラナの脳に危険と書き込まれる。

「出会ったばっかりでこんなこと聞くのごめんっすね。君の愛とは何かなーって思って。」

「自分の愛…?」

愛って言葉には少しびっくりした。
今さっきまで自分の憧れだった人物のことを考えていたからである。

愛を誰よりも憧れてた彼を。

「自分は…家族愛や恋愛だとおもーです。」

すると水仙は立ち上がりラナの前に立ち、両肩を掴む。
流石に驚きを隠せないラナ。

「無理矢理自分の意思を抑え込まない方がいいっすよ。」

水仙の掴む手に力が入る。少し爪がささり顔を歪めるラナ。

「……自分は、“愛”は知ってる人もいるが、知らない人が多いと思います。」

「やっと本心を言ってくれた。でも、その考えはちょっと嫌だな。」

水仙はニコッと笑いながらラナを掴んでいた手を放す。
クルッと回り背中を向ける。

ラナは掴まれていたところを手で抑えている。
少し血が滲んでいる。

「僕の愛は狂愛、友愛、博愛、隣人愛、自愛、慈愛、兄弟愛、親子愛、情愛、溺愛とか全ての愛だと思うっすよ。」

帽子を深くかぶり顔の表情を隠しラナの方に振り向く。

「全ての“愛”を一緒と考える。狂愛も情愛も変わらない愛の形ってェ…。」

to by continued…

新風の誘惑~第1話~

「………」

黒い髪に赤と青のメッシュが入った少女_サディラは今とても機嫌が悪い。

「…何年ぶりの地上かしら。捨てられた時いらいかな…。」

近くの公園に入りベンチに座る。

すると、サッカーボールがサディラの足元に転がってくる。

「っ⁉」

サディラは足をベンチに上げ、そのままボールを見下げる。

「すみませ…ぶっ⁉」

サディラの目の前で派手に転ける茶色の髪の少年。

「………大丈夫ですか?」

「あはは…大丈夫です!」

少年は立ち上がりサッカーボールを見る。

「あの…取ってくれませんか?」

「っ…嫌よ。私サッカー嫌いなの。ボールに触るだけも嫌なのよ。」

ふんっとそっぽを向くサディラ。

「…サッカーが嫌い?」

「そうよ、大嫌い!だから私の前でサッカーなんかしないでっ!」

自分勝手な発言をし、目の前にいる茶色の髪の少年は立ち止まる。

「それじゃあ…サッカーが悲しみます。」

「はい?サッカーが悲しむ…?サッカーは人じゃないから感情なんてないのよ。」

サディラはベンチから降り、少年の真横を通り過ぎる。

「…俺、松風天馬!イナズマジャパンのメンバーです!」

「イナズマジャパン…?」

サディラは立ち止まり、天馬を見る。

「なので…っ⁉」

サディラは天馬に近づき、顔を近づける。

天馬は顔を真っ赤に染める。

「貴方がイナズマジャパンのメンバーなの…?」

じっと見つめながら天馬の顔を触る。

すると、かけていた眼鏡を外し一例をする。

「これからイナズマジャパンに入ることになった…晒城乃夜です。これからよろしくお願いします。」

「………えぇー⁉」