魔界のある出来事2
【アミーVSエネロ2】
「ここは…?」
目がさめると目の前は真っ暗で何も見えなかった。本当に目を覚ましたのかもわからない。
「確かエネロさんと戦っててー…」
身体を動かそうとしたが、金属の音が鳴り響き身動きが出来ない。
その瞬間辺りが光に包まれる。
「う、嘘でしょ…」
エネロは特別な鎖に繋がられる十字架に貼り付けられている。…そう、あの時のように。
すると、突如綺麗な顔立ちの男性がアミーの前に現れる。
「ラー…」
ラーと呼ばれた男性はアミーのことを光のない目で見つめる。アミーは炎で鎖を溶かそうとするが、特別な鎖はアミーの炎さえも弾きかえしてしまう。
「無駄な抵抗を止めて少しくらい大人しくしたらどうだ、元太陽神アポロン」
ラーはアミーの顎を掴み自分の方に向ける。アミーはそのまま睨む。
「汚ねぇーやり方なんかするんじゃねェーよ、ラー」
アミーは今まで誰にも見せたことないような目つきでラーを睨みつける。
「汚いやり方は貴方ではないのですか?………あと、気安く俺様の名を呼ぶな」
アミーの腹に膝を入れる。アミーは顔を歪ませる。
「それが手前の本性なんだよォ…!俺の前だけじゃなく、皆の前でも見せたらいいんじゃねェーのかよ」
口調が元に戻ってしまうアミー。そんなアミーを見下しながらラーはもう一発蹴りを入れる。
「黙れ、元太陽神。今のお前なんかに仲間なんていない」
ラーの後ろでは沢山の神が並んでそれを見ている。
「まぁ、最初からお前のことを仲間だと思ってた奴は誰もこの世にはいねェーんだよ、アポロン」
ラーはアミーを中心に魔法陣を発動させる。
「生まれ変わったら愚民にでもなってろ、元太陽神アポロン」
その直後に魔法陣から勢いよく炎が燃えだす。
「(またこの夢か…。何度見ても何故俺は抵抗するんだ……きっと俺は)」
アミーはハッと意識を取り戻す。
目の前にはラーではなく、先ほど戦っていたエネロが紅茶を飲んでいる。
「夢はどうでしたか?」
エネロはうっとりしながら微笑む。アミーは顔を暗くしたままで膝をついてしまう。
「元太陽神なだけありますわね…この悪夢は最悪ですね。まさか…弟子に太陽神の座を取られるなんて」
アミーは何も言い返せなくその場で歯を食いしばるだけ。
「あの状況からよく生き延びましたわね。…ふふっ、それに精神的にも」
エネロは飲んでいた紅茶のカップを持ちアミーの方まで歩いていく。
すると、エネロは残りの紅茶をアミーにゆっくりとかける。
その光景を見ていた東西南北のリーダー達も驚いた。フアフューは真剣な眼差しで2人を見つめるが、落ち着きがない。
「だから貴方は人を信じなくなったんですよね?…上面の関係で虚しくないんですか?」
エネロは回し蹴りでアミーを蹴った。アミーは避けずそのまま吹き飛ばされる。
「………」
「動きたい?言葉を吐きたい?否定をしたい?…ふふっ、それは今の貴方では出来ないでしょうね」
またもアミーに近づきアミーの頭を足で踏みつける。
「なんで身体が動かないか教えてあげる。…貴方がこの問題を解決しなければ一生動かないわ」
そのままぐりぐりと踏み潰すエネロ。
一方、アミーは何もする事が出来ない。動くのは脳だけ。
「(神の力も封じる技か…。禁断の技を使ってそう長く持たないな…集中力が切れた瞬間に畳み掛けるかー)」
するとエネロはアミーの顎を持ち上げる。アミーはエネロの目を見ると背中がぞっとした。
「私から目を離してもいいのかしら?」
顎を持つ手をやめ、赤い矢を召喚する。そして逆の手には青い矢を召喚すると、赤と青の矢を合わせる。
「赤は恐怖の矢。青は精神破壊の矢。…2つ合わさると何になるか分かるかしら?」
アミーはカッと目を開けて抵抗しようとするが、身体が動かないため唇を噛みしめる。
「…ふふっ、正解は死(破壊)よ」
振りかざした瞬間、先ほどアミーが持っていた槍がエネロの腕に刺さる。
一瞬の出来事に力をコントロール出来なくなり、アミーへの力を解放してしまう。
「…っ!」
アミーはエネロを軽く蹴り距離を置く。エネロはそのまま吹き飛ばされ地面に倒れる。
「ぐっ…一体誰が…こんなことするのよ……ちっ」
槍が飛んできた方を見ると、いつの間にか現れたレラジェがエネロを睨みつけている。
「……手前、アミーに何してんだよォ」
レラジェはどんどんエネロの方に近づいていく。エネロはすぐさま立ち上がり弓矢を持たず打つ構えをする。
「いきなり邪魔をするなんて…常識ないんじゃないかしら」
そのまま左手の手を離すと弓が発射された音が鳴り響く。その瞬間、レラジェの動きが止まる。しかし、まだレラジェは今でも喰ってかかってきそうな勢いで睨んでる。
「透明の矢は身体を麻痺させ動けなくなるのよ…さて、何で貴方がここにいるのかしら?」
エネロは少し警戒しながらレラジェに問いかける。
「アミーを傷つけるのは許さない!!」
「あら、私たちは模擬戦中なんですよ?怪我するのは当たり前なのでは?」
アミーはこちらに駆け寄ってくる。レラジェはそのままアミーに目線を移す。
「レラジェ!何してるのー…何でこんなことするのよー」
先ほどまで見ていた東西南北のリーダー達や、フアフューもレラジェの方に集まってくる。
「……アミーがそんな顔するなんて手前、何したんだよォ!?」
エネロは冷たい態度でレラジェを見つめてる。周りの人も黙って見つめるしかない。アミーは少し動揺してるように見えるが、必死に隠そうと下を向いてる。
「あら、ここで言ってもいいのかしら?」
見下すように言い放つとアミーの目の色が少し変わる。レラジェも少し大人しくなる。リーダー達は興味があるが、ここで聞くことは間違ってると思って珍しく黙って3人を見つめる。
「アミー」
フアフューはアミーに歩み寄る。アミーは光のない目でフアフューを見る。
「エネロが何をやったかは大体は理解できる。だけどな、お前はそれを乗り越えるために空軍に入ったんだろォ?」
アミーの頭を撫でる。アミーは少し驚くが、また下を向いてしまう。
「下だけは向くな。前を見ろ。後ろを振り向きたくないのは皆そうだ…だけどな、後ろも振り返らないといけない日が絶対やってくる」
バッと顔を上げるアミー。するとフアフューはいつも真顔だが、少し柔らかい笑顔を見せる。周りにいたリーダー達は少しびっくりする。レラジェは目を開いて2人を見つめる。
エネロは無言で弓をしまう。
「模擬戦はここで終わらせていただきたいのですが、よろしいですか?」
いつも通りの笑顔を向けながら一礼をする。
「アミー様すみませんですわ。嫌な事を思い出させてしまって」
アミーはエネロの方を向くとエネロはにっこりと笑っている。アミーもいつも通りに微笑む。
「ぅんー。またやってよー、エネロさんー^^」
その瞬間エネロの姿は消え、そのいた場所にはニゲラが一輪だけ咲いていた。
「ニゲラかー…花言葉は……」
アミーはそう言うとニィっと笑った。
レラジェの身体は自由に動くようになった。
「アミー大丈夫かァ?」
アミーの肩に手を置くレラジェ。アミーはその手を優しく振り払うと満面な笑みでレラジェに抱きついた。
「大丈夫だよー!私ー、空軍で良かったー!!」
きゃっきゃやってるアミーとレラジェを見ながらフアフューはまたも少し微笑む。
「フアフューも変わったねー。やっぱりルシファーさんはすごいね」
「前だったら絶対笑わないし、助けたりしなかっただろうね」
「まぁ、成長ってやつじゃねェーの」
「……俺たちももっと頑張らないとな」
マンモンの言葉に4人は少し黙り込む。
「…さて、帰ったらたっぷりと会議しないとなァ…ハハッ」
フアフューは4人の襟首をまとめて掴む。ギョッとリーダー達は驚く。
「まだまだたくさん時間あるから楽しみにしとけよ…お前ら」
そのまま瞬間移動でフアフュー達はアミーとレラジェの前から姿を消す。
アミーはニゲラの花を摘み、不敵に笑う。
「今度は夢でやろうぜェ…エネロ♪」
〜END