新風の誘惑 ~イナギャラ小説~

「やぁ、元気だった…?」

ニコッと微笑む薄緑色の髪をした少年。

少年の背中には白ではなく黒色の羽が生えていた。

少年の前には本をもった少女が木の下で座っていた。

「誰ですか…?ここの人ではないですね。」

少女は少し警戒をしながら目の前にいる少年に話をかける。

「僕は、雨龍帝(うりゅう みかど)。堕天した者だよ。」

すると、風が少女を囲む。

少女は身動きが出来なくなる。

「な…何をする気ですか?私は貴方のことを知りません。」

少女は必死に抵抗をするが、風から逃れることができない。

「別に変なことはしないよ。今はね。」

深い言葉に少女は今まで感じたことない恐怖が襲いかかる。

「っ!だ…誰か⁉」

叫ぼうとする少女の口を帝の手で覆いかぶす。

「しっー、叫んだらわかってるよね?」

帝は怪しく笑い少女に顔を近づけた。

少女はおとなしくなり、帝の手が離れる。

「名前は?」

「サディラです…サディラ・アルデナ…。」

帝はやっぱりっと呟き顔を遠ぞける。

「僕の本名は、ラネット・アルデナ。君の本当の兄だよ。」

サディラは驚き顔を歪ませる。

「いやっ!近寄らないで!あんた達なんか大嫌…っ⁉」

サディラの首筋に冷たい感触。

ナイフを押し付けられてる。

「知ってるよ。君が家族のこと大嫌いなんてこと。」

帝はサディラを風から逃してやる。

「だから、条件を飲んでもらうよ。」