ー暗闇。何もなく自分だけがいるこの空間。この空間は1人の男には充分過ぎるほどの落ち着ける場所であった。
だが、黒髪に夕日のような真っ赤な瞳は憂鬱な色を浮かべてる。

「フアフュー何をしているの?」

「っ!?」

黒髪に夕日のような真っ赤な瞳の持ち主、フアフューの目の前に真っ白な雪のような長い髪を結い、夕日のような真っ赤な瞳の女性が覗き込む。
優しくてどこか落ち着く声。懐かしい感じがする。

「フアフューは1人でいる時間が好きなんだよォ…そろそろわかってやれよ、お母さん♪」

お母さんと呼ばれた白髪の女性の後ろから女性とは真逆のような真っ黒の髪に真っ青な波を重ねた海みたいな瞳を持つ男がやって来る。
男はフアフューと全く外見が変わらない。変わるとしたら、瞳の色ぐらいだ。

「父様、そんなことありませんよ?フアフューは妾が好きすぎて照れてるだけなんですよ!」

「お、お前ら…っ」

フアフューは驚きを隠せない。男は見覚えがある。いつも必要以上に絡んでくる最もフアフューが苦手、否、嫌いな人物である父親の「クローフィ=チェーニズロー」だ。
その隣には見覚えのあるネックレスをつけた見覚えのない女性。だが、やっぱり懐かしい感じで、声質がどこか落ち着く。瞳の色はまるで自分を見ているようだ。

「クソ親父…それに……」

フアフューが言葉に困っていると女性はギョッと目を開き、その場に崩れ落ちた。

「まさか…妾、母のことを忘れてしまったのですか…?」

母と名乗る女性と初めて会う人だった。でも、やっぱり初めてとは思えないほどその笑顔に癒された。

「お袋…?」

「そうよ。貴方の母の「ヒュドール=ローゼ」よ」

優しい笑顔。どこかルシファーに似ているところがある。
何故かフアフューは頬を赤く染めてしまう。

「何だ、お前…母さん見て赤くなりやがって……母さんは俺のだぞ」

「まぁ!妾は幸せ者ですわ」

その瞬間、何かが崩れ落ちるような音がした。



***



「……あっ、フアフュー起きた?」

次に目が覚めると目の前には、白金の髪を一つに纏めた紅玉の瞳を持つ、男が笑顔で覗いている。

「ルシファーか…どうかしたのか?」

「いや…すごく嬉しそうな顔をしてたからいい夢みたの?」

フアフューは起き上がると前髪をかきあげる。ルシファーはフアフューの隣に座る。

窓の外の晴れやかな青い空を見ながらフアフューは言った。

「たまにはいい夢を見るんだな…」



菊里様宅のルシファー君を借りました。フアフュー誕生日特別小説でした( ºωº Ξ ºωº )
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